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小林よしのり
2017.1.10 13:20日々の出来事

メリル・ストリープと「本音」と「建て前」


メリル・ストリープのスピーチは立派だと思う。

弱者への「惻隠の情」がない餓鬼大将みたいな

トランプの下品さは一国のリーダーとして情けない

限りだ。

 

しかしオバマ大統領のように巧みな口舌で美しい

建て前を滔々と語るリーダーも鼻白むだけである。

核ボタンを持って来て、核廃絶の建て前だけを美しく

語ればそれで陶酔する日本人も相変わらずの平和ボケだ。

 

日本にだってオバマ演説を真似た美しい建て前を

真珠湾で自己陶酔しながら語った首相がいる。

それでコロッと騙される国民も平和ボケだなと思うが、

実際、安倍政権の支持率は上がっている。

 

「和解」と言うならもう原爆投下についての責任は

問えなくなるのに、そのことが人類にとってどれだけ

負の遺産になるか思いつきもしないのが日本人だ。

 

そして真珠湾で「平和の同盟」と言い、「不戦の誓い」

と美辞麗句を恥ずかしげもなく吐き散らかすことの

欺瞞に日本人は誰も気づいていない。

 

日米同盟が「平和の同盟」のはずがなく、北朝鮮や

中国の武断主義が不穏に渦巻くこのアジアの情勢の

中で、「不戦の誓い」などしてる場合かと吐き捨て

たくなる。

 

日本にはまだまだ本音主義が足らないのだろう。

たかが弱者・少数者へのヘイトなど、本音とは全然

言えない。

ヘイト・スピーチは本音ではなく、弱い自分の底上げ

を図るルサンチマンの発露なのだ。

 

権力者が美辞麗句のポエム演説をやったときも、

あるいはむき出しの差別主義を露わにしたときも、

その「偽善」と「欺瞞」をともに叩くことこそが、

本音主義なのかもしれない。

 

メリル・ストリープは本音なき建て前を言ったのでは

あるまい。

ポリコレ棒を振り回した言葉ではないと思う。

あれは権力者の「欺瞞」を撃つ本音なのだろう。

 

権力者の「嘘」を見抜き、「偽善」を暴き、「欺瞞」を

撃ちぬく感性が日本人には欠如している。

だから戦時中に大本営発表のマスコミの嘘に騙され、

暴走する軍部を止められなかったのだ。

何も変わっていない。

日本人は何も変わっていないのである。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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